僕ね、村に帰ってきたら作りたいって思ってたのがあるんだ。
それは何かって言うと、魔道オーブン。
だってあれがあれば柔らかいパンがいつでも焼けるし、アマンダさんのお店で売ってるようなお菓子だって作れるもん。
でもね、お母さんがお家にいる日はパンケーキを焼くお手伝いとかしなきゃいけないでしょ?
魔道オーブンがどんなのかはアマンダさんに教えてもらったから大体解ってるけど、作るんだったらちゃんと考えてやらないとダメだよね?
だからホントは最初のお休みの日に作ろうって思ってたんだけど、スティナちゃんに鏡を作ってって言われちゃったもんだから今日までほったらかしになっちゃってたんだ。
「今日はお母さんもお出かけしてるし、お姉ちゃんたちも森に行っちゃったから大丈夫だよね?」
でも今日はお家に誰もいないからご用事を頼まれる心配はないよねって事で、魔道オーブンを作る事にしたんだ。
「とりあえず、どんなふうに作るのかを書かないとダメだよね」
イーノックカウにいる時から考えてたから、頭ん中になんとなくこうやればいいんだろうなぁと言うのはあるんだよ?
でも、そのまんま作ろうとして途中で解んなくなっちゃったらやだから、僕は木の板にどうやって作るのかをかき事にしたんだ。
「アマンダさんは、薪を燃やしたり火の魔石を使ったりして熱くした空気を鉄のかまどの周りに送ってあっつくするって言ってたっけ」
石窯とかだと最初に中で薪を燃やして、あったまった石窯と隅っこに寄せた火のついた薪で入れた物を焼くんだけど、それだとかまどの中で温度が違っちゃうでしょ?
でもそれだとお菓子屋さんみたいにおんなじ物をいっぱい作るところは困っちゃうから、魔道オーブンはあっつい風を送ってかまど全部をおんなじように熱くするんだって。
「う〜ん、って事はこんな感じかなぁ?」
そこから僕が考えたのは、焼く物を入れるかまどの周りにもう一個おっきなかまどを作って、そこに後ろからあっつい風を送り込むってやり方なんだ。
「あっ! でもこれだと、僕んちじゃ無理かも」
実際に書いてみて思っったんだけど、この方法ってちっちゃいオーブンには向かないのかも?
これがアマンダさんのとこみたいにお店で使うオーブンだったら、この方法でもいいって思うんだよ。
だってお菓子を焼くかまどの周り全体にすっごく熱くした風を送っても大丈夫なように、その周りをおっきく囲っちゃえばいいんだもん。
でもお家で使うオーブンだと、そんなにおっきなのは作れないよね?
って事はだよ、かまどの周りにもう一個かまどを作るってのはダメってことか。
「でもなぁ、中に入れるかまどを直接温めたら火の魔石があるとこだけがあっつくなっちゃうし……」
ホットプレートん時みたいに、魔道リキッドでかまど全体に線を書いて温めようかなぁ?
あっ、でもそれだとおっきな火の魔石を使わないとダメだから、使う時に魔道リキッドをいっぱい使わないといけなくなっちゃうか。
アマンダさんに教えてもらった魔道オーブンは、あんまりおっきな火の魔石を使わなくても中に入れた物を焼けるのがいいんだよね。
それにオーブンって、作る物によっては長い間焼かないとダメなものもあるもん。
だから魔道リキッドをいっぱい使うおっきな火の魔石なんて、魔道オーブンには使えないんだ。
「って事は、やっぱりあっつい風を作ってかまどを温めるのが一番なのか」
火の魔石って、活性化させるとその周りの空気を熱くするんだ。
だから魔道オーブンは別のとこにちっちゃなお部屋を作って、その中の空気を送り込むことでかまど全体を熱くするんだよなぁ。
あれ? って事はだよ。
「もしかして、別に熱い風を作るお部屋、作らなくてもいいんじゃないの?」
氷の魔石って何かを凍らせることができるけど、周り全体をつべたくするわけじゃないんだよね。
だからクーラーを作る時は、氷の魔石じゃなくってクールって言う魔法が刻まれた魔石が必要だったんだ。
でもさ、さっきも言った通り、火の魔石は活性化させることで周りを温める効果があるでしょ?
って事はだよ、クールの魔法とおんなじで、熱い風を作ろうと思ったら活性化してる火の魔石の周りを通すだけでいいんじゃないかなぁ?
そう思った僕は、さっそく実験してみる事に。
「筒ん中に火の魔石をぶらさげればいっか」
あくまで試しに作るだけだから、構造は簡単。
直径10センチくらいの筒を作って、その真ん中に来るように米粒くらいの火の魔石を針金で固定。
そしてその筒の片方に同じく米粒大の風の魔石をくっつけると、魔道回路図を書いて片方から入った風が火の魔石の周りを通って反対から出てくるだけの簡単な魔道具が完成した。
「思った通りだと、これであったかい風が出てくるはずだよね?」
と言う訳で、実験開始。
僕は魔道回路図に自分の魔力を通して、火と風の魔石を活性化させてみたんだ。
「やった! ちゃんとあったかくなった!」
そしたらね、結構あったかい風が筒の片側からぶぉ〜って出てきたんだ。
って事はさ、もっとおっきな火の魔石を使えば、この方法でもちゃんと魔道オーブンが作れるはずだよね。
そう思って僕は喜んでたんだけど……。
「ルディーン、ここに居たのね、あら、また新しい魔道具を作ったの?」
そしたらご用事が終わったお母さんが帰ってきて、僕に声を掛けたんだ。
でね、僕が作った実験の魔道具を見つけると、何を作ったの? ってのぞき込んできたんだよね。
「あら、あったかい風が出る魔道具なの? う〜ん、でも今の季節には必要ないものよね?」
僕んち、台所には魔道クーラーがつけてあるでしょ?
だからお母さんはこれを見て、おんなじようにお部屋を温める魔道具だと思っちゃったみたいなんだ。
でもこれって魔道オーブンを作るための実験で作った奴だから、そうじゃないんだよって教えてあげようとしたんだ。
でもね、その前にお母さんが別の魔道具だって思っちゃったみたい。
「あっ、そうか! お母さん、解ったわよ。これ、髪の毛を乾かす道具でしょ?」
「髪の毛を乾かすの?」
「あら、違ったの?」
何でそんな風に思ったの? ってお母さんに聞いてみたんだけど、そしたらこないだイーノックカウで泊まった宿屋さんのお風呂に、風が出て来て髪の毛を乾かす魔道具があったって教えてくれたんだ。
「あそこにあったのは、ただ中の羽が回って風が出てくるだけのものだったのよ。でもこれを使えば、もっと早く髪が乾くんじゃないかな? ってお母さんは思ったのよ」
「そっか! つべたい風よりあったかい風の方が早く乾くもんね」
僕は使った事ないけど、そう言えば前の世界にもドライヤーって言う髪の毛を乾かす道具があったっけ。
この魔道具ってお母さんの言う通り、あの道具そっくりだよね。
「でも、このままだと使い辛そうね。ルディーン、取っ手とか着けられない?」
「着けられるよ! それにね風の強さも変えられるし、あったかい風だけじゃなくって冷たい風も出せるんだよ」
それにさ、前の世界で見てたオヒルナンデスヨでやってたんだけど、ドライヤーってあったかい風で乾かした後につべたい風で冷やしてやんないと髪がダメになっちゃうんだって。
だから僕、ちゃんとした魔道具にするならつべたい風も出せるようにしなきゃって思ったんだ。
「そうね。確かにこの時期なら、熱い風だけじゃなく冷たい風が出た方がいいかもしれないわ」
「それだけじゃないよ! あったかい風の後はつべたい風もかけないと、髪の毛が悪くなっちゃうんだ」
「あら、そうなの? ルディーンはホント、いろんな事を知っているのね」
お母さんはそう言うと、偉い偉いって僕の頭をなでてくれたんだ。
魔道オーブンを作ろうと思ったら、魔道ドライヤーができてしまいましたw
いつかは作ろうと思っていたけど、これってルディーン君は使わないものだからどうやって出そうと思ってたんですよね。
でもこれ、シーラお母さんからしたら魔道オーブンよりうれしい発明かも?
なにせ石窯があるからオーブンは無くても困らないけど、これがあるかないかで冬場何かは大きく違うでしょうからね。